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アスリートのケガ?2024~ 鎖骨遠位端融解症~

昨年のオフは大きな手術のニュースが無かったよな?の確認のためと公式ホームページに行った際に見つけたいくつかの手術のニュース。その中で最も気になったニュースです(4月の藤原の骨折以来、ホームページ行ってなかった)。

0)導入

一年前のお話、昨季戦力外になったフェルナンデス投手です。春先に何度か登板し、一軍に上がることなく5月に手術そのまま戦力外の投手です。ファンとしては『なぜ取った?』になります。タイトルがその『フェルナンデス投手の手術について』https://www.marines.co.jp/news/detail/202400495727.htmlです。

開けてみると『鎖骨遠位端融解症』に対し『右肩鎖関節のクリーニング手術』を行ったようです。長くなるので、しんどくなれば2で読み終えてもらえばいいと思います(3以降は専門的な話が増えます)。

 

1)鎖骨遠位端融解症とは?

まず病名から、ほぼ初耳でした。

①知らない病気は調べます。

とりあえず院内の蔵書を漁ります。

『標準整形外科 第8版』記載なし。

『今日の整形外科治療指針 第5版』記載なし。

ほかに何冊か見てみたものの、『外傷後にたまに起こる変化』くらい。病名としての項目はありません(ちなみに日本の保険適用になる病名リストには載っています)。

 

ネットで無料で手に入る範囲の文献をいくつか調べてみました。要点としては

・圧倒的に男性が多い

・外傷後と非外傷後があるらしい

・肩鎖関節への物理的ストレスによる鎖骨遠位端の微小骨折が原因?と考えられている

・レントゲンで骨が溶けたように見えるようになって初めて診断がつく(初期はMRIでの異常のみ)

・数年で自然に落ち着く(骨に戻る)ので、局所安静が第一選択

・仕事的(生活に)に困る場合は手術

 

くらいでした。

 

2)なぜ手術?

一言でいうと『投球時に痛いから』『安静にできない職業だから』です。

鎖骨遠位部とは図の位置にあたります。肩鎖関節から鎖骨遠位部には『巻き肩になった時に圧がかかる場所』にあたります。投球動作では、『腕を後上方から前方に回すとき』に肩鎖関節に負荷がかかります。

つまり一球投げる度に(回旋を伴いながら)圧がかかります。投球時に何かをきっかけに微小骨折や骨挫傷を起こし、さらに繰り返すうちに、レントゲンで骨が溶けたように見える変化(融解)が出てきたのでしょう(ファンの『なぜ取った?』への回答)。

治療方針は、保存(局所安静)か手術の二択になります。

 

3)ここからは(自分が外国人投手だったらとのif設定での)妄想です。

①来日すぐに肩が痛いとはなかなか言えない。ので無理に投げる。(『恥ずかしい』『来年の契約にも影響する』)

②そのうち投げられないほど痛くなる(もう無理)。そこで初めて球団に相談。

③病院で精査【レントゲン+たぶんMRI】を行い、投球禁止を言われる(焦る、異国語で言われると分からん)。

投げる以外のトレーニングをする(けど、肩の安静って難しいんです…ある程度病態を自分なりに理解したうえで、日常生活レベルでも気を遣う必要があります)。

④やっぱり『痛くて投げられない』ので手術療法。しかしシーズン中に大きな手術はできない(手術侵襲で今期中の復帰が絶望的になる)ので、『炎症性関節滑膜などのクリーニング手術』を行った。けど、術後リハビリも肩の安静って難しいので、投球再開すると痛い。

⑤投げられず退団

こんな流れですかね。

 

現地の言語を通訳を介さないといけない異国でのチャレンジってかなりリスキーだよなぁ。日本になじもうとする外国人選手が日本で成功するとはよく言われていますが、そう考えると名を残した外国人選手って本当にすごいですねぇ。

 

中川和也 拝