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特発性大腿骨頭壊死症①

プロ野球ネタ×整形外科疾患です。

まず、特発性大腿骨頭壊死症という病気、なかなか聞きなれない言葉です。原因は不明(=特発性)で、大腿骨頭が壊死する病気です。その理解のためには股関節の理解が必要です。

股関節は骨盤にあるドーム状のくぼみ(寛骨臼)とその形に合うような大腿骨の上の端っこの球状の部分(大腿骨頭)で形成されます(絵が見たければググってください)。膝や指など一方向にしか動かせない関節とは違い、ドーム内の球を支点にして、いろんな方向に筋肉で引っ張って動かすことができる関節(球関節)で、自由度の高い可動域があります。気を付けの姿勢から屈伸方向(歩くために足を前に出す(屈曲)や後ろに引く(伸展))、内外転方向(脚をクロスさせたり開いたり)、内外旋方向(膝を伸ばしたまま足先を外や内に向ける)、それらを組み合わせて『休め』(片足だけ外転外旋)、『あぐら』や『お産の恰好』(屈曲外転外旋)などができます。

その一方で、寛骨臼は外下方を向いているし、骨頭がはまり込んでいるだけなので、体重をかける関節であるにもかかわらず、重みを受ける面積が狭いことも特徴です。

で、大腿骨頭壊死症。

①大腿骨頭への血流障害が原因で壊死すると言われている。

②ステロイド薬の投与や大量の飲酒が関連するようだ。

ただし、②が原因ではない例も少なからずあり、またステロイドや飲酒による血流障害が引き起こされる確たる証拠もないです(なので『ステロイド性』や『アルコール性』は特発性に含まれる)。それに①も『説が有力』程度なので、『原因不明』で『厚労省の特定疾患(難病)』に含まれる疾患です。

病態は、壊死した部分が体重を受ける場所なら体重を支えきれず炎症が起こり ⇒ それでも体重をかけると壊死部分がつぶれてきます ⇒ すると球形であった大腿骨頭が楕円形のような形になります。体重をかけた際に壊死部分にかかった圧での炎症が痛い、それを支えてきた周りの筋肉も痛いなど、夜間痛も含め最初は痛みが前面に出てくる病気です。壊死部分がつぶれきってもとに近い強度になれば、体重をかけた痛みは減りますが、この期間に筋肉が固くなるし、寛骨臼内への骨頭のおさまりも悪くなるため、可動域がすくなくなります。

さて、治療です。壊死した骨頭は健康な状態に戻す方法はありません。なので、バックグラウンドを考えず、病名から判断するなら人工股関節になります(壊死した部分を切除して金属に代え、それを受ける寛骨臼も金属に代えてしまう)。

若年であれば、壊死した部位や面積にもよりますが、大腿骨頸部の回転骨切り術というものもあります。これは、骨頭を支える頸部の根元で一旦骨を切り、頸部を軸に回転させて骨をつなぎなおす手術です。かなりの大技であり術前計画も綿密にたてる必要がある上に、珍しい疾患にしかしない希少な手術、術中の回転の加減も難しい手術なので、大学病院レベルの股関節の専門家が行う手術です。目的は、体重がかかるところにあった壊死部をかからないところにずらして、健常部分で体重を受けるようにする手術です。うまくいけば可動域は減りますが痛みなく走るくらいはできるようになるようです。

かなり前振りが長くなりましたが、今回このネタをやった理由は、オリックスの某若手外野手が『この疾患で手術を受けた』との報道を見かけたからです。で、色々と思うことが出てきたので書いてみました。が・・・骨頭壊死の話だけで長くなりすぎました(笑)。続きは次回で・・・

結局野球関係ないやん・・・

中川和也 拝

 

 

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