整形外科を受診される患者さんは、大半は『〇〇が痛い』からです。その〇〇も、首、肩、腰、膝、ひじ、手、足など様々です。痛くなった時期も今日から数十年来など様々です。なので整形外科医は、首から下のすべての痛みについて診る医師とも言えます(おなかは無理ですよ~)、だいぶんえらそうに言ってしまいました。
ただ痛みってのは自分だけのもので決して他人には共有できません。経験したことのない痛みは分からないですし、経験したことのある病名でも感じ方は様々です。
自分の経験ですが、昔ソフトボールをしていて、投手の投げたボールを避けきれず、ボールとバットのグリップで親指を挟まれてひびが入ったことがあります(ひびも骨折ですよ、ズレていないだけで)。折れ方を見て様子を見ながら良くなりましたが、当初の痛みはそれなりに今でも覚えています。しかし、同じ部位で同じ折れ方をしていても痛がり方は人それぞれ、そんなに痛かったかな?って程痛がる方もおられますし(もちろんのど元過ぎればなんとやらの可能性もありますが)、全然痛がらない方もおられます。
ってことで痛みを診るというのは非常に厄介です。そこで共有しやすい話に変換します。その具体的な内容が前回のまじめな話①で出た、A『来たのが”今日”である理由』とB『その痛みでどう困るか?』です。自分の中で病院は行きたくない場所の一つです。会話がうまくないので、初対面の人と話すだけで2ランクハードルが上がるのに、相手は初対面の医者ですよ、通常の5ランクくらいハードルが上がります。皆さん大なり小なりあるのでは?
でも患者さんは病院に行こうと思うほど困っているハズと思っています(自分はそんなに緊張されたくないですが)。
ただ、A『今日なんで来ました?』とかB『それで何に困ります?』といきなり聞かれると必ずフリーズします。下手したら怒ります。
問診票はその橋渡しをするためのものと位置付けているつもりです。一度診察室に入る前に来院されたきっかけを考えてもらい、会話の取っ掛かりを作ってもらいます。
きりがないので続きは次回・・・簡単にまとめると、『他人は痛みを共有できない』『問診票は理解するための橋渡し』でした。
中川和也 拝